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2016年8月22日月曜日

「青竹酒」

和久傳HPより



気がつけばお盆休みはすでに終わっている。
三つの台風来襲の中400字のリングのゴングは鳴った。

四、五日間は休もうと思っていたが、実質的には二日足らずであった。
銀座の仕事場に出たり入ったり、また人に会いにアッチコッチに行った。

世の中はうだるような暑さであり、甲子園は熱闘であった。
日本の裏側で行われているオリンピックも気が付けば終りだ。
ついこの間までどこにいるのか、何をやってんのか分からなかった国会議員小池百合子氏が、今や東京都知事としてSPや付き人をギョーサン従えて閉会式に向かって行った。

人間の運命はサイコロの目のように出てみないと分からない。
人生は浮沈みする。
絶対エースといわれた投手が思いもよらず大量点を取られて負けてしまう。
霊長類最強といわれたレスリングの選手が負けて銀メダルとなり、号泣する。
戦禍の中コソボの選手が女子柔道で金メダルを取った。
日本から400人近く選手が行って金メダルは12個(21日現在)だ。

オリンピックばかりで気持ち悪くなったので、チャップリンの「独裁者」「街の灯」「ライムライト」を見た。12本見るつもりだったが全部は見る事ができなかった。
諸問題、諸々相談、諸仕事があり、辻堂⇔東京を行ったり来たりした。
人間の心の闇は深い。男と女の修正は難しい。権力を目指す人間たちの野心は尽きない。

オリンピックに国中が気を取られている内に、天皇が生前退位を希望するというようなメッセージを日本国政府に突きつけた、憲法九条の改正はさせないというメッセージでもある。言葉は静かな程怖しいものだ。
金だ、銀だ、銅だと新聞テレビは大はしゃぎだが、天皇から突きつけられた“どーだ”には黙して語らずだ。

休み中いろんな人と会ったが、それぞれ一本の映画、一編の小説になるほどの内容であった。
月刊文藝春秋で芥川賞受賞作「コンビニ人間」というのを読んだが、全く文学性の欠片もないものであった。高校生の日記の方が余程しっかりとしているだろう。
芥川賞なんかもうやめた方がいい。

H・ヘミングウェイの「老人と海」を再読した。
これに関しては後日記す。何度読んでも見方が変わる。
私の尊敬する友人がH・ヘミングウェイの研究者として有名なのだが、意見が合わない。
といっても私からみると雲の上にいる学者さんなので、私の見解などはへのつっぱりだ。

日本の経済状況がオリンピックで万歳、万歳としている内に、いよいよ万歳となっている。アベノミクス大失敗の尻拭いをさせられている人に、心から同情する。
2020年東京オリンピックはこの国の経済にトドメを刺すだろう。
日本人は未だ屋根の下の競技にしか通用しない。
卓球、バドミントン、柔道、体操、レスリング、水泳など。
本来の種目である、より速く走る、より高く飛ぶ、より遠くへ飛ばす。
それらは体力的にかなわない。

円盤投げなどをやっている人は見た事がないのだが、私の身体のメンテナンスをしてくれている達人が、高校時代円盤投げをやっていてインターハイに出場するほどだったと聞いた。テレビ欄で一生懸命円盤投げを探したが見つからない。
夜電話があって放送時間を教えてくれた。生まれて始めて円盤投げをずっと見た。
砲丸投げと同じで何が面白いんだか分かんないが、解説を聞いている内に、実に人間工学的で物理的で哲学的であり、奥深い事を知った。

私は、金、銀、銅の選手より銅の次、つまり四番目の選手ばかりを見ていた。
全力を尽くしてガックリの姿が美しいのだ。人生は一歩届かずに価値がある。
いわば鉛とか錫のメダルの選手だ。敗者(?)の中の一番(四位)がいいのだ。

21日早朝ブラジルとドイツのサッカーの決勝戦を見た。
延長戦のあとPK戦、キャプテンネイマールが決めてブラジルが優勝した。
絶対勝つ事を義務付けられたネイマールの涙に乾杯した。
四位は貧しき国ホンジュラスであった。
有り余るほど強化費を使った日本のサッカー選手は予選で負けた。

夏の終わりを感じる、海は黒々として荒れている。
白いクラゲがその中で毒づいている。過日新宿伊勢丹の「和久傳」で買った、特製青竹酒でスポーツマンたちに乾杯した。
私は生きる事に地獄のような練習をして来ただろうか。

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