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2016年8月23日火曜日

「寺田寅彦に学ぼう」


最近の広告の中でインパクトがある広告コピーといえば、矢沢永吉さんがCMに出ている日産自動車の「やっちゃえNISSAN」であろう。
コピーライターはよくぞメッセージを集約させて未来への技術を書いたと思う。
日産自動車はよくこのコピーを採用したと思う。

広告キャンペーンとしては見事に成功している。
が、もし機械任せ、コンピューター任せのクルマが、老人や子ども、視覚障がいのある人にバーンとブッツケて傷を負わせたり、死亡させたりしたら誰がどう責任を取るのかは分からない。
「やっちゃえ」という言葉は矢沢永吉さんという特別な個性を持っている人だけに許される時代へのイキオイづけの言葉であって、果たして企業は「もしやっちゃたら」の事を考えているのか疑問を感じている。

昨夜台風の影響で銀座の仕事場近くのホテルに泊まった。
今日の午前中に大切な打合せがあるので万全を期した。
何しろ東海道線は風雨に弱く、すぐに不通となるからだ。
夜七時半にホテルに入り、寺田寅彦先生の名著「天災と国防」を読む。
資料として購入してもらっていた。

寺田寅彦先生は物理学者にして名随筆家であり、博覧強記夏目漱石先生と親交があり「吾輩は猫である」の中に出てくる理学者水島寒月のモデル、また「三四郎」に出てくる物理学者野々宮宗八のモデルであったという通説がある。
“天災は忘れた頃にやって来る”といったのも寺田寅彦先生だという。
この本は災害大国日本人の必読の書であろう。

本文は読んでもらうとして、この本を解説している東大工学部畑村洋太郎教授のある一説が気になった。
−−技術が進むと、機械やシステムの分担領域が大きくなり、従来起こっていたような事故やトラブルは起こらなくなる。
しかしながら、機械やシステムが進歩した分、人間の側のそれらへの依存度がますます高くなり、そのことが逆に危険を大きくするのが常である。
この危険は人間にとって便利になった分だけ、寺田のいうように事故やトラブルになったときに暴れるエネルギーが大きくなっている。なおかつ人間のほうは注意力が著しく下がり「機械やシステムがやってくれるはず」と信じているから、こうした錯覚が生じたところで、従来は考えられなかった、信じられないほど大きな事故やトラブルが生じることがある。(原文ママ)

天災も人災も学者たちの机上では防いでくれているが、実際は絶えず想定外である。
日産自動車宣伝部も「やっちゃえNISSAN」を生んだクリエイティブチームも、寺田寅彦先生の「天災と国防」を必読してほしいと願う。
矢沢永吉さんだけに許される広告がある。
キャラクターである矢沢永吉さんを守るべく、企業はしっかりとその時のためにメッセージをしなければならない。勿論広告でもしっかりと。

一つの喧嘩も、一つの暴行も、一つの盗みも、集団行動のはじめの言葉は「やっちゃえ」で始まる。そして今、憲法改正も。やがて戦争もだ。
矢沢永吉さんが言う「やっちゃえ」はウジウジすんな、夢は追え、行動せよということだと思う。
やっちゃえという言葉をどう訳してカルロス・ゴーンにプレゼンテーションをしたのだろうか、とても興味がある。まさかトライNISSAN、チャレンジNISSANではないだろう。


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