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2016年9月7日水曜日

「8×4(エイトフォー)」




最悪の伊東行きであった。昨日むせかえるような新橋駅から列車に乗った。
どこかで信号の故障があったとかで列車は遅れていた。
午後八時過ぎに乗った。

グリーン車に夕刊紙を買って乗ったのだが満員で座れない。
チキショウと舌打ちした。入り口のところに立ったのだが、そこに二人の会社員風三十代の男が同じく立っていた。
なんとその二人が缶ビールと歌舞伎揚げと柿ピーを手にしていた。
ヤバイと思った。

品川駅に着くと人がグイグイ乗って来たので、階段の下の部分に移動した(2階建てなので)、すると男二人も同じように移動して来た。
ぷーんと歌舞伎揚げと柿ピーの臭いがして、ビールの臭いと一緒になって私の最も苦手な展開になった。

柿ピーは自分が食べている時はすこぶる旨いし、ビールも勿論旨い。
が他人が隣で食べていると不気味なほどの臭いとなり、柿の種を食べる音に精神がかき乱される。一人の男が食べていた茶色い柿の種一個が、もう一人の男のシャツの肩にポトンと落ちてへばりついたが男は何気にそれを取って口に入れた。
一人でも我慢できないのに二人となると生き地獄となる。

二人は同僚のようでサッカーの話をしている。
タイなんかに負けたら監督はクビだよなとか、テレビ間に合うかなとか、やけに混んで蒸し暑いなとかをポリポリ、ガリガリ食べては缶ビールを飲む。
ウグッなんて一人がゲップをした時、我慢もこれまでかと思い、ウルセイ、クセイ、静かにしろと言おうと思ったがグッとこらえた。

まあサキイカはないし、チーカマもないし、貝柱燻製もないし、何しろ暑いしと思いやっと川崎に着いた。
だが数人降りて数人以上乗って来たので、更に混んで来た。
いっそ降りて隣の列車に移ろうと思ったが、何か逃げ出すようでやめた。
そうか、8×4(エイトフォー)を持っていた、男の汗臭さを消すというスプレーだ。

バッグからそれを持ち出して殺虫剤をまくようにブシュー、ブシューとあてこするように首筋に吹き付けた。なんだこりゃ、な、なんなのこれ、という感じになったのだが一人の男が、オオーいい臭いなんて言って私に向かって笑いかけた。
サッパリしやすねと愛嬌のある顔だった。黒いジーンズに青い半袖のシャツを着ていたのだが、8×4によって黒いジーンズに吹きつけたものが白く点々とくっついた。

真っ赤な口紅が流行っているのか、振り返った女性は渡辺直美のような感じでやけに赤い厚い唇が怖かった。彼女の服にも8×4の白いものが少々かかったらしい。
ナニスンノヨコンナトコロデ8×4なんてバカオヤジという顔だった。

家に帰ると愚妻がクリエイトなんかで柿ピーが何袋も入っているのを買って来ていた。実は息子の大好物なのである。
これとじゃがりこ、ハッピーターンの三点セットだ。
息子は、酒は飲まないのに柿ピーは袋の口を開けバババーと一気に口に投入するのだ。

スナック菓子を作っている工場に取材に行った時、絶対食べない方がいいですよ発ガン物質ばかりですから、ネズミに食べ続けさせるとほぼ100%なりますから、なんて言われて皿に山盛りのスナック菓子を出された事がある。

日本代表のサッカーは20でやっとこさ勝った。
相手のシュート数はわずか23本、日本代表は25本以上。負けたも同じ試合であった。
何しろ相手は世界ランク117位だ。私は横浜で一度降りてベンチで次の列車を待って乗り換えた。

この私にやっと我慢が身について来たのだ。
新しいプロジェクトをやり遂げるまでは、じっと我慢なのだ。
今の私は殴られてもニコッと笑い、蹴られてもニタッと笑う。
そう心に決めているのだ。但し××の場合は必ず×××にする。

石巻から初サンマを送って頂きそれを食べた。三宅島のくさやと同じ絶品であった。
お刺身まであった。すだちと大根おろし、これで日本一の和食だ。

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