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2016年10月12日水曜日

「焼き海苔」



♪~アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい 夜が明ける 日がのぼる 朝の光りのその中で 冷たくなった私を見つけて あのひとは 涙を流して くれるでしょうか…。


現在の大学生たちは知らないだろうが、その昔大学には全共闘の時代があった。
西田佐知子が切々と唄うこの歌は戦いに敗れた全共闘世代に圧倒的支持を受けた。
“冷たくなった私”は抵抗に屈した自分たちの姿に思えたのだ。

現在65~68才位の大人たちは、中核、革マル、ブンド、民青等々、それ以外はノンポリと言われた。全学連は一つのファッションでもあった。
今や定年となりかなり無気力、無重力化した65~68才世代はやがてプチブルジョア(プチブル)化していく。
実は国家権力者側に内通して情報料をしこたま手に入れたり、権力者側に踊らされていた。
全共闘時代を経て日本国の警察組織は捜査一課第一主義から“公安”にその力関係は変わって行く。

全共闘は鬱屈した学生たちにとって格好のはけ口となった。
フリーSEXがまかり通った。処女であることは権力者側にいることと同義語であった。
“暴力は最後の理性だ”なんて空気を入れる学者たちがいた。
全共闘たちに思想的影響を与えた学者たちが真っ先に権力者側に転向したのは言うまでもない。

私が最も影響を受けた、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が九日死去したということをニュースと記事で知った。九十歳であった。
歩行補助具を使いながら遺作(Afterimage)を今年のトロント映画祭に出品したと記事にあった。
五十年代の抵抗運動(レジスタンス)三部作「世代」「灰とダイヤモンド」「地下水道」は珠玉の名作であり、全共闘世代の若者の心を捉えた。

私の好きなシーンがある。
「灰とダイヤモンド」の中で若いテロリストが、白い洗濯物がズラーッと干してある下を逃げるシーンだ。カメラワークが抜群であった。
モノクロームの映画であったがまばゆいばかりの映像美であった。
白と黒の対比が抵抗運動の明と暗を表していた。
黒澤明監督に影響を受けたとアンジェイ・ワイダは後に語った。

私の拙作であるピンク・レディーのMIEが唄った灰とダイヤモンドの題名はこの映画からいただいた。革命はガレキと灰の中からしか生まれないと言った。
当時レジスタンスという言葉は流行り言葉となった。
暴力革命は全否定するが、抵抗しない社会はファシズムを生む。
ペンは銃よりも強いはずだが、現代のペンは暴露でしかない。

午前二時八分〇五秒、いつものグラスにお酒を注いだ。つまみは焼き海苔。

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